夕日
真っ赤に染められた部屋
ただひたすら
沈んでゆくそれを見ていた
ひとりで
たったひとりで
『翳りゆく部屋』
異様な散乱模様のこの部屋で、すっかりやる気を尽くしてしまった。
英理は家具の無い部屋で床に腰を落としている。
もうずっと。
お尻が痺れて、それでも立ち上がる気にはなれなかった。
かつて寝室だったこの部屋には、今は数個の茶色のダンボールが散らばっているだけでまったく生活感などなかった。
まるで夢のようだ。
ここに私が生活していたという事実がひどく恐ろしいことに思えた。
無音の部屋は活力をぐんぐん奪っていく。これでは感傷的にならないほうがおかしい。
・・・やっぱり手伝ってもらえば良かったな。
仕事中の彼を引っ張り出すのにはやっぱり気が引けてしまった。
遠慮なんてするはずなかったのに。
やっぱり気が滅入る。
悪いことなど一つもないのに。
全てが順風満帆だというのに。
沈む夕日を見ていると。
ピンポーン
小五郎だ。
ほかに訪ねてくる男などいるはずが無かった。
受話器をとって一階のオートロック解除ボタンを押す。
きっと仕事が速く片付いたのだろう。やたら手伝いに来たそうな顔をしていたので、くるかもしれないと実は密かに思っていた。
ピンポーン
今度は玄関へと向かった。
「いらっしゃい」
「邪魔しにきた」
夕日焼けした彼の笑顔が
とても素敵だと思った。